去年9月に厚生労働省が「過重労働重点監督月間」によって、労働基準監督署やハローワークへの通報、離職率が極端に高いなどの企業に対して重点監督指導が行われました。
その重点監督指導により何らかの労働基準関係法令違反が認められた企業が、重点監督を実施した企業(およそ5,000事業場)の82%にのぼったとされています。法令違反内容としては
「36協定未締結などによる違法な時間外労働(残業)」
「賃金支払い残業(サービス残業)」
が多くを占めており、是正勧告等による指導をしたにも関わらず、是正を行わない企業に対しては「送検」「企業名公表」も視野に入れて厳しく対応するとしています。
これらの結果を見ても、労働時間をどのような管理方法で行うのか、賃金をどのような構成で支払うことが自社にとって最も良いのかといった労働時間管理・賃金管理の制度設計・適切な運用が平成26年度も引き続き重要であることが浮き彫りになっています。
長期間に及ぶ長時間労働が、脳・心臓疾患といった疾病だけではなく、精神疾患の発症などのリスクが高まることは、近年問題となっています。
それらのリスクに加えて、
「過度な長時間労働による生産性の低下」
「社員のスキルアップへの弊害」
となることも無視できません。
「賃金支払い残業(サービス残業)」が状態となるような労務環境が続けば、当然、退職者や在籍している社員から未払いとなっている残業代の請求をおこされる大きなリスクを負うことになります。だから、この労働時間管理・賃金管理の重要性については少しうるさく書かしていただきます。私は社会保険労務士としての仕事を通して、労働時間管理・賃金管理の設計・運用支援がどれだけ重要であるかを痛烈に感じているからです。
今まで行っていた人事・労務管理体制を変え、新しい制度を導入したり、管理方法の改革をおこなおうとした場合、それがどれだけ理にかなっていたことであったとしても、社員全員が諸手をあげて賛成するようなことは滅多にありません。
当たり前のように行われていたルールが、ある日突然「変化」することになれば、社員の反発や不安・不信などがおこることも当然に想定でき、経営者の方が踏み込みにくいことも理解できます。
しかし
「今まで社員から残業代請求をされたことがない」
「労働基準監督署の調査が入ったことがない」
などといった理由で、将来のリスクからに目を逸らしていたとしても、ある日突然降りかかる大きなリスクを目のあたりにした時には、すでに取り返しのできない事態に追い込まれてしまいます。
「どこの会社もサービス残業は当たり前だから払わない」
といったことが通用しないのは、『貸金業者相手に行われている過払い金請求』の経緯を見れば明らかです。
長時間労働が常態化している、残業代を支払っていない、毎月の勤怠計算方法が間違っていることで払うべき残業代に足りていないなどの問題は、必ずそのようになってしまっている理由があります。
それらの理由を洗い出し、改善策を「検討・実施・運用」していくことが人事・労務管理のリスクコントロールの上でも今後ますます重要になってくるといえます。